GENKIな会員企業のご紹介

一般社団法人日本障がい者ファッション協会 代表理事 平林景氏にインタビューしました。

企業情報
社名:一般社団法人日本障がい者ファッション協会
設立:2019年11月
役職:代表理事
住所:大阪府茨木市中総持寺10-1
URL:https://jpfa-official.jp/

事業内容
障害の有無や、性別や年齢を超えて、全ての人が着られるファッションブランド「bottom’all」の展開を軸に、ユニバーサルデザインをアップデートすることを目的とし、2022年のパリコレ出展を目指しています。
パリコレの翌日、世界がどう変わっているのかを楽しみに、ワクワクしながらプロジェクトを進めています。

会社の誕生

日本障がい者ファッション協会設立のきっかけは、「年を取ると、オシャレを封印せざるをえない」と嘆く車いすの男性に出会ったことでした。

「車いすでは一人で試着室へ入れない、入れたとしても着たい服を試せない。オシャレしたい自分の欲求で他人の手をわずらわせるのは心苦しい」

男性の言葉を聞くうちに、

『障がいを持つ方向けの衣服はあっても、機能性重視でカッコイイとは言えない。カッコよくて着やすい衣服があれば、この男性は諦めの気持ちを持たずにすんだのに』

というモヤモヤがわき上がり、「誰でも着られる、カッコよくて着やすい服をつくってしまおう!」と決意。翌日には手続きを始めて、2019年11月にスピード設立を果たしました。

「誰でも着られる、カッコよくて着やすい服」の開発は、兵庫教育大学の学生、卒業生の力を借りて行いました。意見交換の中で出たのが、巻きスカートはどうかというアイデア。
たしかに巻きスカートなら、車いすユーザーも車いすの上に布を広げ、その上に乗ってまきつければ身にまとえます。着脱しやすければ、外出先でお手洗いを使うハードルも下がるでしょう。
巻きスカートこそコンセプトにぴったりだと思えた瞬間、一つの不安が頭をよぎりました。

「スカートはまだまだ女性的なものというイメージ。明日からスカートを穿いてくださいと言われて、受け入れられる男性がどれだけいるだろう」という懸念です。

スカートを穿いたことのない方にも手に取ってもらうにはどうすればいいかと悩んだすえ、たどり着いたのは誰でも着られるというコンセプトを表すネーミングが必要だという結論でした。

学生たちと知恵をしぼって考えた名前は「bottom’all」。障害の有無も、性別も年齢も超えた、全ての人(All)が着られるボトムス(bottom)にする、という思いをこめています。

入会のきっかけ

茨木市倫理法人会へ加入したきっかけは、いま一緒に日本障がい者ファッション協会で活動している谷口さん、山根さんとの出会いにあります。
ファッション×福祉で日本中をまきこんでいきたい、その一過程としてパリコレに出展したいという夢をお話ししたところ、谷口さんから「茨木市倫理法人会に来てみませんか?」とお誘いいただいたんです。めぐりあわせやご縁を大切にしようという思いから入会を決めました。

「パリコレへ出る」という確信を持てたのも実は、倫理法人会からいただいたご縁のおかげです。

パリコレ出展経験がある会員さんから具体的にどうすれば出展できるかを教えていただいて。その方法を聞いて、出ない理由はない、あとはやるだけだと理解できました。

転機となるような学びは?入会してよかった?

日本障がい者ファッション協会を構成するのは4人。それぞれが自分にしかできない役割を自覚し、足りないものは補いあう、バランスの取れたチームになっています。
一人一人の得手・不得手が絶妙にまじりあい、得意を活かしあう関係性こそ、倫理法人会からの大きな学びだと受け止めています。

この受け止める、という考え方も大切で、他者の意見にただ反発するだけでは、議論は進まなくなります。「あなたの考え方は、私の視点にはなかったものです。そういうお考えもいいですね」と、受け入れるのではなく受け止める、こうした姿勢こそ真の多様性に繋がっていくと思います。

倫理法人会で学ぼうとしている経営者のみなさんへのアドバイス

何かを成し遂げると決めたら、必ず困難が立ちはだかります。その壁がマインドからきているのか、物理的障壁なのかを見極め、どうクリアしていくかを考えるのが経営者の手腕と言えるでしょう。

純粋倫理で言えば、苦難は学びのサイン。倫理法人会で学んでいれば、この先どんな壁があっても、最後には目的地にたどり着けるのだという実感は既にあるはずです。
あとはどう動けば目指すところに最短時間でたどり着けるかを考えるだけなので、行動もシンプル。

ただし、実践のマインドが「苦難を乗り越えたい」という願望ベースではいけません。越えたい・やりたいと言っているうちは、いつまでたっても着手しないからです。
やると決めたら公言して実践する。1度目の実践でダメなら次の方法を試す。失敗はチャレンジに対する回答です。全てがダメになるわけじゃない。口にして実践する、これもまさに倫理法人会の教えですよね。

経営者だから、サラリーマンだからは関係ありません。全員が自分の人生の経営者。みんな、命を懸けて成し遂げたいコトのために命を使っているはず。

だから一つのコトに固執せず、間違えたと思ったら違う可能性や別の方法を試せばいいと思います。それが事業を手放すことであってもいいんです。
なんのために命を使うのか、それは挑戦の中でしか見つかりません。私が最強に恐れるのは、挑戦せず、命の使い方を知らないままで死ぬこと。自分の可能性を知っていく意味でも、継続の判断も撤退の決断も、ともにスピード感をもって行うようにしています。

今後のビジョン

パリコレへ向けて活動を活発化していけば、おそらく「車いすの人にとって、スカートは果たして動きやすいものなのか?」という反論がやってくるでしょう。車いすユーザーの衣服は機能的じゃないとダメ、という現状を維持しようという働きかけですね。

私たちが目指すのは、車いすの方にどうにかオシャレしてもらう世界はありません。仮に世界中の人が車いすを使っていたら、どんなファッションが生まれるだろう?そんな想定から生まれるファッションの創造です。

新たな世界観から生まれる衣服はカッコよくてトガってて、車いすがあるから最強にオシャレな着こなしができる「bottom’all」。

「bottom’all」をパリコレで披露すればきっと、いまある障がい・福祉業界への偏見を一気にひっくり返すことができるはず。
そうして先入観から解き放たれた人たちが、パリコレの翌日どんな行動を起こすのか、そこからどんな景色が広がっていくのかを見届けたい。いまはその一心で、仲間と全力で走っています。

【取材 田本夕紀/茨木市倫理法人会/幹事】
【写真 スタジオハート 上田哲也/枚方・交野倫理法人会/会員】

「車いすという個性があるからこそ、最強かつオシャレに着こなせるファッションをパリ・コレクションでお披露目する。それによって、世の中が福祉に抱く先入観をふきとばす。そのインパクトを目の当たりにした翌日、世界がどう変わっているのかを見届けたい」
平林さんのお話しを聞きながら、もうすぐやってくる『その日』を思ってワクワクする自分を感じた取材時間でした。私も倫理法人会会員として、全力で応援させていただきます。

【平林景氏の所属単会/茨木市倫理法人会/幹事】

※記事中の所属や役職およびインタビュー内容は、取材当時のものです。